横溝正史 蔵の中・鬼火レビュー

  • あらすじ
  • 鬼火 従兄弟同士の争い
  • 蔵の中 どこまでが現実なのか
  • かいやぐら物語 語り部はだれ
  • 貝殻館奇譚 
  • 蝋人 いつの時代もパトロンよりイケメン
  • 面影双紙

あらすじ

著者の横溝正史は言わずとしれた推理小説の大家。金田一耕助シリーズで著名です。気軽に読める短編集がKindle Unlimitedに存在したので読書しました。
長野を舞台とした短編集で6つ作品で構成されています。結核療養で長野にいた際に著述したそうです。メインは生まれついて仲の悪い従兄弟同士の争いが中心の鬼火です。戦前を舞台にしており、時代背景が小説の中から伝わってきました。

鬼火 従兄弟同士の争い

鬼火は長野が舞台の中心で生まれついてから不仲で命がけで意地を張り合う従兄弟同士万造、代助の物語です。幼少期から強烈なエピソードがあり、東京に出て画家として2人とも評価されます。モデルとなっている女性を取り合い、万造は大火傷を負い、マスク生活。代助は刑務所に入ってしまいます。万造が長野に戻り療養生活を送っていると刑務所から脱獄した代助が訪れてきますが、そこでさらに事件が起こります。最終的に事件を調べていた刑事がとあることに気が付き、物語は終焉を迎えました。

ネタバレなしなのでざっくりとした記述になりますが、物語の展開が速く、さらっと読めました。文末解説には同性愛云々と書かれていましたが、あまり刺さりませんでした。

蔵の中 どこまでが現実なのか

愛人を抱えている編集者磯貝三四郎と持ち込みに来た美少年蕗谷笛二の物語です。笛二は結核で肺臓がやられ、4年ぶりに東京に帰って来ました。姉も同じく結核ですでに亡くなっています。姉は聾唖であったため笛二は読唇術が使えます。そのため蔵の中から外を覗き、人々の生活を見て暇をつぶしていました。さて磯貝氏に持ち込んだ小説は笛二が実際に見た風景と読唇術から読み取ったことを題材にしていました。笛二は磯貝氏を主人公にし、磯貝氏が愛人を殺めたこと、次に笛二を殺しに来ると結んで小説は終わります。果たしてどこまでが現実なのかわからない、想像力が湧き立てられる良作でした。

かいやぐら物語 語り部はだれ

療養で海岸を訪れている際に出会った女性との物語。出会った女性は近くの館で恋仲に落ちた青年と令嬢が自殺を図り、青年が生き延びてしまった話を語ります。青年は死体を隠しますが、腐敗は避けられず、まずは眼窩にガラス眼を入れます。努力虚しく、腐敗は進んでしまいます。結局青年も死んでしまい、不審に思った村人により館に入った際には2人の死体のみ残りました。そう語った女性はいつの間にか消えていて、女性がいた場所にはガラス眼だけ落ちていた。

貝殻館奇譚 

男を奪い合いライバルを殺した女性が目撃者がいることに気がつくところから物語は始まります。貝殻館は資産家が建てたからくり仕掛けの館です。目撃者を仕掛けを見せてあげると貝殻館に呼び出し、仕掛けの中で事故を装って殺害します。殺人に気がついた人が人を生き返らせるというトリックで騙し、自白を引き出し物語は終了します。殺したはずの目撃者は双子だったのです。

蝋人 いつの時代もパトロンよりイケメン

こちらは長野を中心とし、芸者の珊瑚と太客の旦那、イケメン騎手今朝治が織りなす物語です。珊瑚が今朝治と逢瀬を交わし、惹かれ合っていることに気がついた旦那は嫉妬に狂い種を残せないよう若い衆に拉致させます。そして珊瑚のもとに今朝治は現れますが、旦那の家を放火して逮捕されてしまいます。チフスで失明してしましますが、今朝治に似た蝋人形と愛し合うことで寂しさを埋めます。旦那との間に子どもができその子どもは今朝治にそっくりなのです。ただ刑務所に入っていた時期と被るので今朝治の子どもであるわけがありません。今朝治に似た蝋人形に気がついた旦那は嫉妬し珊瑚を殺害します。

いつの時代でもそうですが、若いイケメンは正義です。当時は社会保障が薄かったので失明したらたとえ美人であれど捨てられてしまうということに驚きました。

面影双紙

役者に入れ込む母と丁稚から結構した父の話。落ちは入れ込んでいた理由がわかる結末でした。
中身より日露戦争に勝って一流国入りなど時代背景がわかることがためになった。

感想

いずれの作品もサクッと読めましたし、表現なども難しくなく楽しめて読むことができました。小説家特有のカゲロウの腹のようななどの表現は普段ノンフィクションと実用書しか読まないので良い刺激になりました。

アマゾンのkindle unlimitedで読めます。

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